『物理数学の直観的方法』 長沼 伸一郎

大学数学を学び始めると、定理のもっている「意味」や「図学」を考えることを、厳しく諌められることがある。 そんなものは証明ではないと。 たしかに証明ではないが、図学や直観的理解は役に立つ。 定理は確実に覚えなければ使えないが、強固な記憶を作るに…

『新教養主義宣言』 山形 浩生

手に取った一冊の本に期待した、その最初の「期待」を、つぶさに思い出してみると、浅はかで現実的な動機だけが思い出されるが、 こちらの期待を遠く超えて、予期しない世界と接続させてくれる意外性をもつ本も多い。 その意外性こそが読書の魅力だ。 そんな…

『わが師わが友』 朝永 振一郎

楽しんでいたり、何かに熱中している時、時間はあっという間に過ぎる。そういう経験は一般に肯定されることが多いが、時間が過ぎ去っていくのを恐れるあまり、逆に何かに「ハマる」ことを躊躇することはないだろうか?まだ問題の形もなしていない何かのため…

読書効率を飛躍的に高めるちょっとした工夫

ページの四隅を折り曲げて「ポインター」として使う(これを「角ポインター」と呼んでいます)ことによって、効率的復習と高速レファランスが可能になります。例えば以下のページで赤線の引いてある文をチェックしておきたい場合。 右上と左下の「角ポインタ…

『論理の方法』 小室 直樹

フレームワークだのマトリックスだのが流行っているが、複雑化することを厭わずに思考を深める姿勢が軽視されていないだろうか。 どこまでも「自分で」考え掘り下げるという覚悟があって初めて時間の制約の中で結論を出したり、一度立ち止まって思考を整理す…

『集合と位相』 松坂 和夫

「論理的思考」という言葉がガチャガチャ煩しい。必要条件と十分条件の違いだのMECEだの、しつこいくらいに量産される本を見ていると、論理「的」の「的」で踏みとどまっている人間を、際限なくかもり続けているようにしか見えない。 論理「的」思考しか訓練…

『すべてはモテるためである』 二村 ヒトシ

あなたは今モテているだろうか?あなたが若く、そしてモテていないのなら、 どんなに仕事がうまくいっても、どんなに人間関係がうまくいっても、どんなに趣味がうまく進んでも、 どこかで「モテたい」という欲求が芽を出してくるはずだ。 認めようじゃないか…

『基礎 量子力学』 猪木 慶治,川合 光

様々な外国語古文数式電子回路図面プログラミング言語化学式…自分の周りに満ち溢れている読めない記号たちを見ていると、自分が見ることの出来ない世界の広さに悔しくなる。自分だけが十分に楽しめていないのではないかと焦る時がある。 空を見て、星の輝き…

『天職は寝て待て』 山口 周

「大人になったら分かるよ」「結婚したら分かるよ」そして「就職したら分かるよ」 子供のころ飽きるほど聞いてきた大人たちのこの様なフレーズに何度となく言いくるめられてきたことか。釈然としないまま時が経ち、大人たちの怠慢か説明能力の欠如だと思って…

『死について!』 スタッズ・ターケル

死について考える時はいつも、あまりにも雑な言葉しか持っていないことに愕然とする。 言葉を紡ぎだす才能がなければ、言葉を見つけよう。 相手の言葉を引きだす天才が、あらゆる職業・年齢の人から「死」についてのインタビューを行った。 死について経験し…

『採用基準』 伊賀 泰代

自己啓発系のビジネス書を読むといつも思うことがある。 論理力、コミュ力、分析力、その他幾千の「○○力」が大切なことはよく分かった。著者の周りの偉人伝もそれなりに楽しかった。 でも、 薄給の上、残業代もボーナスもない中小零細企業で、終電、タクシー…

『ポジティブ病の国、アメリカ』 バーバラ・エーレンライク

他者の正当な「負の感情(怒り、軽蔑、嫌悪など)」と向き合おう。認知療法や論理療法の自己流解釈や、 自己啓発のグルたちが喧伝するオカルト心理学によって、(一時的には)他者の言葉や、自らのネガティブな感情を分解できるかもしれない。 しかし、他者…

『こうして私は53歳で、また東大生になった』 平岩 正樹

いつでも呼び出し、加工し、他と関連付けることが出来るような「強固な記憶」を作るには、 どこかで「受験的勉強」が必要になる。教科書であれ、読み物であれ、本を次から次へと読み飛ばしていくだけでは、 強固な記憶は作れないのだ。 「勉強」という名に値…

『差別感情の哲学』 中島 義道

誰にでも一人二人いるのではないだろうか。その人を前にすると、つい故ない軽蔑、敵意、憎悪を抱いてしまう、 そんな相手が。お題目としての愛、共感、相互理解は分かっていても、 「明日こそは優しくしよう」といくら決心しても、いざ当の相手に直面すると…

『常微分方程式』 ポントリャーギン

こんな風に考えたことはないだろうか。数学の啓蒙書を読んで、 「なんだこれは、本質的なことが何も書かれてない上に、手におえない過剰な賛辞が山のようだ。 神の方程式?神との対話?冗談じゃない!こちとら神とお話してる暇なんてないんだよ! (嗚呼、テ…

『孤独について』 中島 義道

矮小で、些細で、暗く、陰気な悩みと 体の隅々まで沈殿した醜い虚栄心や計算と 徹底的に向き合い 人間嫌いと世間嫌いを「完成」させ 孤独を選び獲得した壮絶な人生がある。もしも、今「人間嫌い」であり 真に不幸という自覚がある人がいるのなら 本書は小さ…

『愛の解剖学』 カール・グラマー

自分の感情に従いながら、 感情の重みの分だけ相手を喜ばせようと思って選択した 行動が、メッセージが、 全て裏目に出てしまった経験はないだろうか。若かった頃、そうして終わった恋が 一つ二つないだろうか。その度に、必要なのはもっと相手を読む技術だ…

『タテ社会の人間関係』 中根 千枝

自分の個別的な人間関係に近視眼的に夢中になっていると、 自分が求める人間関係の構造的条件が見えなくなってくる。なぜ自分は彼の人が此の人より重要で、 其の人とはこうこうこのような関係を望むのか、自分が置かれている人間関係の力学を、 もう一度見直…

『科学革命の構造』 トマス・クーン

何もしていないのに、 何かをしたつもりになっていることは愚かと言われるが、何もしてない誰かを、 何かをした気分にさせ、 そこに対価が発生すれば、 それは何かをしたことになるらしい。自分が何かを成したと思いたいがために、 彼が何かを成したと、彼に…

『スタンフォードの自分を変える教室』 ケリー・マクゴニガル

一つ一つと事を済ませるたびに、 行動を駆り立てるカードが入れ替わっていく。時々、ルーレットのように円環状にならんだ行動のリストが、 目の前で回転するのが見えるような気がする。輝いていたものの輝きが終わり、 暗くモノトーンに沈んでいたものが色彩…

『虹の解体』 リチャード・ドーキンス

休みがまっている。 また走り出すための休みが。集中して走るために、 封印してきた感動や感性が沢山ある。次のステップに行くためには、 感動の解放をすることが大切なのではないだろうか。それは骨休めや一時のレクリエーションとは違う。 本質的に学び直…

『孤独』 アンソニー・ストー

孤独、孤独、孤独なクリスマス。 こんな日は家に内にこもるに限る。しかしいつからこうなのだろう。 私たちは、満足感を得られるほど親密な関係が幸福をもたらすことこそ理想であり、もしそうでなければその人間関係には何か欠陥があるに違いないという思い…

『代数系入門』 松坂 和夫

年末だ。 出来事を振り返るのもいい。 やれたことやれなかったことのリストを振り返るのもいいだろう。でも今日は杜撰(ずさん)にすませたまま宙吊りになっている思考たちを振り返ろう。それには再読に限る。 とくに数学書は必ず自らの怠慢に気づかせてくれ…