『ポジティブ病の国、アメリカ』 バーバラ・エーレンライク

他者の正当な「負の感情(怒り、軽蔑、嫌悪など)」と向き合おう。

認知療法や論理療法の自己流解釈や、
自己啓発のグルたちが喧伝するオカルト心理学によって、

(一時的には)他者の言葉や、自らのネガティブな感情を分解できるかもしれない。


しかし、他者の言葉の裏にある、他者の感情の色合いまで忘れてはいけない。

自分のネガティブな感情の裏で確かに存在する、自分の意志までは忘れてはいけない。


「ポジティブ病」は病なのだ。

救命胴衣であるようにいわれているポジティブな「思考コントロール」だが、実際に行うとなれば耐えがたいほどの負担にもなりかねない。自分自身の意見があいまいになり、重要な情報が入ってこなくなるのだ。われわれには、場合によっては恐怖心やネガティブな思考が顔を出さないよう注意する必要も出てくるだろう。だが、つねに必要なのは、自分の外側の世界に対して警戒を怠らないことだ。これまでに述べてきたように、そうしないと危険なのである。
現実に油断なく向き合うことは、幸福を追求する妨げにはならない。

ポジティブ病の国、アメリカ

ポジティブ病の国、アメリカ

[目次]

  1. 微笑みで死を遠ざける?
  2. 望めば何でも引き寄せられる?
  3. 歴史から見る、アメリカ人が楽観的なわけ
  4. 企業のためのモチベーション事業
  5. 神はあなたを金持ちにしたがる
  6. ポジティブ心理学―幸せの科学
  7. ポジティブ・シンキングは経済を破壊した
  8. ポジティブ・シンキングを乗り越えて