『タテ社会の人間関係』 中根 千枝

自分の個別的な人間関係に近視眼的に夢中になっていると、
自分が求める人間関係の構造的条件が見えなくなってくる。

なぜ自分は彼の人が此の人より重要で、
其の人とはこうこうこのような関係を望むのか、

自分が置かれている人間関係の力学を、
もう一度見直さなければならない。

それには自分の価値観だけを見つめていてはいけないのだ。
他者の価値観、他者が別の他者に期待する価値観の全体が力学の場を作っているのだから。

あまりにも人間的な―人と人との関係を何よりも優先する―価値観をもつ社会は宗教的ではなく、道徳的である。すんわち、対人関係が自己を位置づける尺度となり、自己の思考を導くのである。

しかし、人間関係の力学を重視する立場自体も、
ある条件をもとに与えられた価値観に過ぎないのだ。

したがって、日本人は…である、という前に、一定の同一条件を与えられた場合、日本人でなくとも、どこの国の人間だってこのように反応するのではないかと、疑問をもってみる必要がある。

「単一社会の理論」という副題は重要である。

タテ社会の人間関係 (講談社現代新書)

タテ社会の人間関係 (講談社現代新書)

[目次]

  1. 序論
  2. 「場」による集団の特性
  3. 「タテ」組織による序列の発達
  4. 「タテ」組織による全体像の構成
  5. 集団の構造的特色
  6. リーダーと集団の関係
  7. 人と人との関係